海外との往来が増えた結果、最近は国際結婚も昔に比べて増えているようです。しかし、国籍が異なる場合の離婚率は約45%となっており、日本人同士の離婚率である約35%を統計上10ポイントも上回っています(2007年)。*1
このように離婚率が高止まりしているのは、一般的に文化や言葉の壁が原因とされますが、離婚の理由を個別に見ていくと、それが本当の原因ではないように思われます。
では、国際結婚が難しい本当の理由は何なのでしょうか?
確かに国際結婚が失敗しないためのチェックリストや離婚の個別事例がネットには溢れていますが、どれも表面的なもので、根本的な原因まで探れていません。
ですのでここでは、いくつかの個別事例をもとに、それらに共通している問題を明らかにしていきたいと思います。
国際結婚が失敗する理由
まず、ネットに上がっている離婚事例を元に離婚理由を整理してみます。
大きく分けて、
- 誰が問題なのか(横軸)
- 問題の種類(縦軸)
の2つで問題を整理した表が下の図になります。
下の図から、多くの日本人夫婦が抱える問題と同じように、「個人的」な問題が多くあることがわかります。簡単に言うと、二人の間の考えが合わないということです。
「文化的」とされる問題であっても、その内容を詳しく見てみると、実は配偶者の文化というよりも、相手の個人的な考え方を理解できず、それを安易に文化の問題にしてしまっているのではないかと推測できます。
この推測を裏付けるべく、「文化的な問題」とされていることの内容を見ていきます。
文化・言葉が問題とされているケース
事例① 言葉の壁?
以下、言葉の違いが原因で離婚したという事例を見てみます。
『40歳で結婚し、移住。年のせいか、才能のせいか、なかなかオランダ語が身に付かず、付き合っていた時から英語でコミュニケーションをとっていた旦那とは特に問題はありませんでしたが、結婚して、旦那のご両親とコミュニケーションをとらなくてはいけなくなった時に、それはもうすごいストレスでした。旦那のご両親も呆れ返っていた様子で、それがとても悲しくなりました。特別理解がない方々だったのかもしれませんが、得意ではないオランダ語を好きになんてなるはずもなく、オランダでの生活も苦に。やがて、それが原因で夫婦の間にも溝ができ、離婚に至りました』
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出典:国際結婚で離婚しないための事前チェックポイント7つ | 恋愛jp (太字は引用者)
配偶者の両親とオランダ語で意思疎通ができなかったことが夫婦の間に亀裂を生む原因という書き方がなされています。
しかしこのオランダ人の旦那も、自分の妻がオランダ語をできないというのは付き合ったときからわかっていたことです。旦那がなぜ、妻のそうした状況を理解して、支えてあげたり、自分の両親に対して妻を擁護してあげたりしてあげれなかったのかが疑問に残ります。
オランダ人のパートナーの気配りが欠けていたことが離婚の本当の原因ではないでしょうか。
事例② 相性が合わないのは文化的な差異のせい?
2つ目の事例では、相性の問題が離婚原因であることが暗示的に述べられています。
「彼の実家は、祖父母、両親、姉夫婦とその子供が住む4世代家庭。歓迎はされたけど、ネイティブ同士の外国語はまだ聞き取れず、会話に入っていけませんでした。毎日ポツンと一人で過ごしてましたね。まさにドラマの初期のエリー状態。
それだけじゃなく、家がとにかく不潔。例えば、冷蔵庫に食材の生肉を直置きするのは当たり前だし、バスタブはカビだらけだけど誰も気にしない。彼にそのことを言っても、『日本人は細かいことを気にしすぎる! この国ではどこの家でも大体こんな感じだよ』と取り合ってくれませんでした」
お国柄の違いだと諦めたアイさん。ところが、彼の様子が徐々におかしくなっていくのに気づきます。
「彼は輸入商品のネットショップを運営していたんですが、私の知らないうちに廃業していたんです。それについて問いただすと『すぐに次の仕事を見つけるから心配しないで』の一点張り。義父母も『若いから仕事はすぐに見つかる』とのんびりすぎる発言。おおらかな国民性が私には理解できませんでした」(中略)
それがきっかけとなって二人は離婚。1年あまりの結婚生活にピリオドを打つことになったのです。
「振り返ると、国際結婚だから失敗したっていうよりは、私の男を見る目がなかっただけな気もしますね……。(以下、略)」
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出典:<TEXT/北条マサ子(清談社)>朝ドラ「マッサン」はリアル?国際結婚は簡単じゃない! | 女子SPA!(太字は原文)
当初は、言葉の壁や「おおらかな国民性」に問題があると考えていた上記の日本人女性も、結局は相手男性の性格に問題があったと結論付けています。
そもそも、言語もおぼつかない状態で、相手の家族から「これがこの国では普通だ」みたいなことを言われれば、その考え方や習慣がその家族/配偶者特有のものであっても、その国に一般的なものと考えてしまうのは不思議ではありません。
異文化の相手は理解しにくい
日本人同士であっても夫婦の間での問題は山ほど出てくるかと思います。
夫婦円満に過ごすためには、
- 相手のことを十分理解する
- 自分の立場を相手に理解してもらう
- 相性が合う
という条件が必要です。そうでない限り、新たに問題が出てきたときにすぐに関係が壊れてしまいます。
文化や言語が異なると、相手がこうした条件を満たしているのか事前に十分にチェックできないまま国際結婚してしまうことがあります。そうしたことが、国際結婚が挫折する本当の原因でしょう。
異文化の相手を理解するには文化・言語の知識が必要
相手の性格を理解するには、ある文化特有の行動パターンを知っている必要があります。
Aという振る舞いや発言をしたときは、A'という感情が隠れていて、そのことを読み解くことで、相手の性格や考えを理解できます。
この読み解き作業には、
A(振る舞い)→A'(感情や考え)
という文化的パターン(コードといってもいいかもしれません)を事前に知っている必要があります。これは、高度な文化的または言語的前提知識がなければできないことです。
こうした作業がおろそかになっているために、
という事例が国際結婚の場合には多いのではないかと思います。
そのため、国際結婚が失敗する可能性が高いのは、文化や言語の差異自体ではなくて、相性を結婚前にチェックできていないからではないでしょうか。
余談①:個人的な問題が原因で国際結婚が失敗する事例
上に挙げた表で具体的に取り上げることができなかった、個人的な軋轢の例についてコメントしてみたいと思います。
これらの事例を見ると、国際結婚特有の理由というよりも、日本人夫婦でもありうるようなことが離婚の原因となっています。
僕は2人の子どもをオーストラリアで保護させた経験のあるものです。前妻の言葉の暴力は本当にひどかった。結婚10年目で離婚に至りました。彼女の嘘にはもう我慢できなかったし、2人の息子へのネグレクトにも耐えられなかった。
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嘘やら暴力を吐くというのは、異文化云々というよりも、人としてやはり問題のある言動でしょう。耐え切れないのは当たり前です。
2人で食事している時は僕の皿から食べ物を盗むようになり、彼女が気に入ったものがあれば隙をついて横取りされるようになりました。だから僕は食事のたびに皿を腕でガードして食べなくちゃいけませんでした。
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このような自己中心的な行動は眼に余ります。
どんな環境で育てば、大人になっても人の食べ物を奪うような行動に出られるのでしょうか。文化や国籍云々というよりも、その人の性格の問題でしょう。
余談② 経済的な問題が離婚の原因となる場合
経済的な問題は、経済状況が日本と異なった国の人と結婚した場合に生じることが多いようです。
例えば、配偶者の収入が少なく、配偶者だけではなく、その親戚も日本人が稼ぐ給料を当てにすることがあるそうです。
旦那の親戚まで私のお金を当てにする始末。実家の屋根の修理代から姪っ子の学費にいたるまで、ありとあらゆる面で頼られました。
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日本人の感覚からすると、これだとさすがに嫌になりますね。
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*1:出典:曲 暁艶「国際結婚に関する研究動向と展望」『東京大学大学院教育学研究科紀要』 2009年(49号), pp. 265-275,ここではp. 268